
「新人研修を毎年同じ内容で繰り返していて、講師役の社員の負担が大きい」「研修を動画にしたいけれど、何から手をつければいいのか分からない」「作ってはみたものの、最後まで見てもらえていない気がする」。人事や教育担当の方から、こうした相談をいただく機会が増えました。研修の動画化は、うまく設計すれば教える側と学ぶ側の両方の負担を減らせますが、ただ講義を録画しただけでは、思うような効果が出ないこともあります。
本記事では、研修動画の作り方を、企画から撮影・編集・公開までの流れに沿って解説します。受講者が最後まで見たくなる構成のコツ、形式ごとの向き不向き、費用相場と費用を抑える方法、よくある質問までまとめました。これから研修動画をつくる方、すでにある研修動画を見直したい方の判断材料にしてください。
研修動画とは?集合研修との違いと広がる背景
研修動画とは、社員教育の内容を映像にまとめ、受講者が好きな時間に視聴できるようにしたものです。新入社員研修、ビジネスマナー、コンプライアンス、ハラスメント防止、管理職研修、営業研修、システムの操作説明など、扱うテーマは多岐にわたります。まずは、従来の集合研修との違いと、研修動画が広がっている背景を整理しておきましょう。
集合研修との違い
集合研修は、講師と受講者が同じ時間・同じ場所に集まって行う研修です。その場で質問ができ、グループワークで受講者同士が学び合えるのが大きな強みです。一方で、会場や日程の調整が必要になり、講師の話し方や当日の進行によって、伝わる内容にばらつきが出やすいという面もあります。
研修動画は、内容を一度つくれば、何度でも同じ品質で届けられます。受講者は自分の都合の良い時間に視聴でき、分からないところは繰り返し見返せます。その反面、受講者が一人で見るため、集中を保つ工夫や、理解を確かめる仕組みを別に用意する必要があります。どちらが優れているというより、目的に合わせて組み合わせるのが現実的です。
研修動画が広がっている背景
研修のデジタル化は年々進んでいます。矢野経済研究所が2026年4月に発表した調査によると、2025年度の国内eラーニング市場規模は、提供事業者売上高ベースで前年度比2.7%増の3,923億5,000万円の見込みです。このうち法人向け(企業・団体内個人を含む)のBtoB市場は、1,293億5,000万円(同4.7%増)とされています。
研修にかける費用も増えています。産労総合研究所の「2024年度 教育研修費用の実態調査」によると、2023年度の従業員1人あたりの教育研修費用の実績額は平均34,606円で、大企業・中堅企業・中小企業のすべての規模で前回調査から増加しました。人材育成への投資が増えるなかで、限られた予算と時間をどう使うかを考えると、繰り返し使える研修動画は有力な選択肢になります。
研修動画に向いているテーマ
研修動画に特に向いているのは、毎年・毎回同じ内容を伝える研修です。新入社員向けの会社理解やビジネスマナー、全社員が受けるコンプライアンス研修、業務システムの操作説明などは、内容が大きく変わらず、受講者の人数も多いため、動画にする効果が出やすい分野です。
反対に、受講者同士の議論が中心になる研修や、その場の状況に合わせて講師が内容を変える研修は、動画だけで完結させるのは難しいでしょう。この場合は、知識のインプットを動画で事前に済ませ、集合研修では議論や実践に時間を使う、という組み合わせが効果的です。
研修動画を導入するメリットと注意点

研修動画を導入するメリットは、教える内容をそろえられること、講師と受講者の時間を節約できること、何度でも見返せることの3つに集約されます。一方で、つくり方を誤ると「見るだけで終わる研修」になってしまいます。導入前に、メリットと注意点の両方を押さえておきましょう。
教える内容と品質をそろえられる
最も大きなメリットは、誰が受けても同じ内容が届くことです。集合研修では、講師が変わったり、拠点ごとに別の担当者が教えたりすると、伝わる内容に差が出がちです。研修動画であれば、本社でも地方の拠点でも、入社時期が違う社員にも、同じ説明を同じ品質で届けられます。
特に、コンプライアンスや安全教育のように「全員が同じ理解を持っていること」が重要なテーマでは、この点が大きな意味を持ちます。
講師と受講者の時間を節約できる
研修のたびに講師役の社員が同じ話を繰り返す必要がなくなります。中途入社が多い会社では、入社のたびに個別で説明していた内容を動画にするだけで、担当者の負担は大きく減ります。
受講者にとっても、会場への移動や日程調整が不要になり、業務の合間に少しずつ学べるようになります。研修のために全員のスケジュールを押さえる必要がなくなるのは、現場にとって大きな利点です。
何度でも見返せる
集合研修で一度聞いただけでは、すべてを覚えるのは難しいものです。研修動画なら、分からなかった部分や、実際の業務で迷ったときに、必要な箇所だけを見返せます。研修が「その日だけのイベント」ではなく、業務中に参照できる教材として働くようになります。
注意点①:見るだけで終わりやすい
研修動画の最大の弱点は、受講者が受け身になりやすいことです。再生ボタンを押して流しておけば「受講済み」になってしまう仕組みでは、内容が身についているかどうかが分かりません。確認テストやワーク、上司との振り返りなど、理解を確かめる仕組みとセットで設計することが欠かせません。
注意点②:情報が古くなる
制度やルール、社内システムは時間とともに変わります。一度つくった研修動画を見直さずに使い続けると、古い情報を教えてしまうおそれがあります。制作の段階で、変わりやすい情報と変わりにくい情報を分け、更新しやすい構成にしておくことが大切です。
受講者が最後まで見る研修動画の構成のコツ

研修動画の効果を左右するのは、映像の豪華さよりも構成です。受講者が「自分に関係がある」と感じ、迷わずに最後まで見られる流れをつくることが、何より大切です。ここでは、制作の現場で私たちが意識している5つのコツを紹介します。
1本の長さは短く区切る
60分の講義をそのまま1本の動画にすると、途中で集中が切れたり、見る時間を確保できずに後回しにされたりしがちです。テーマごとに5〜10分程度の短い動画に分け、1本で1つのことが分かるようにすると、受講者は業務の合間にも視聴しやすくなります。
短く区切っておくと、内容に変更があったときに、該当する1本だけを作り直せるという利点もあります。
冒頭で「何ができるようになるか」を伝える
動画の冒頭では、あいさつや会社の沿革から入るのではなく、「この動画を見終わると、何ができるようになるのか」を最初に示しましょう。たとえば「この動画では、取引先からのクレームの電話を受けたときの初期対応の流れが分かります」と伝えるだけで、受講者は見る目的を持って視聴できます。
「結論→理由→手順→確認」の順で並べる
研修動画の本編は、最初に結論を伝え、次にその理由、続いて具体的な手順、最後に要点の確認という順番で組み立てると、内容が頭に入りやすくなります。背景説明から長く話し始めると、受講者は「結局何をすればいいのか」が分からないまま見続けることになります。
最後に要点を3つ程度にまとめて画面に表示すると、見返すときの目印にもなります。
確認テストやワークで「見て終わり」にしない
動画の最後や章の区切りに、簡単な確認テストや「自分の業務に置き換えて考えてみてください」といったワークを入れると、受講者は内容を自分のこととして考えるようになります。テストの結果を集計すれば、理解が足りていない部分も見えてきます。
動画の中で答えを考える時間をとり、「一度動画を止めて考えてみてください」と呼びかけるのも、受け身の視聴を防ぐ有効な方法です。
字幕とチャプターで見返しやすくする
研修動画は、音を出せない環境で見られることもあります。字幕を入れておけば、音声なしでも内容が伝わり、専門用語や数字の聞き間違いも防げます。
また、動画の中に章(チャプター)を設けておくと、見返したい場面にすぐたどり着けます。YouTubeで公開する場合は、概要欄にタイムスタンプを書いておくことで、動画を章ごとに区切って表示できます。
研修動画の作り方|企画から公開までの6ステップ

研修動画は、次の6つのステップで制作を進めます。自社でつくる場合も、制作会社に依頼する場合も、流れは基本的に同じです。特に最初の2つのステップを丁寧に進めるかどうかで、仕上がりと効果が大きく変わります。
ステップ1:研修の目的とゴールを決める
最初に、「この研修を受けた人が、何をできるようになればよいのか」を具体的に決めます。「ビジネスマナーを学ぶ」では範囲が広すぎるため、「来客時に正しい手順で応接室へ案内できる」のように、行動で確認できるゴールに落とし込むのがポイントです。ゴールが明確になると、動画に入れるべき内容と、入れなくてよい内容が自然に決まります。
ステップ2:受講者と視聴環境を整理する
次に、誰がどこで見るのかを整理します。新入社員なのか管理職なのか、事務所のパソコンで見るのか、現場でスマートフォンで見るのかによって、適した言葉づかい、尺、文字の大きさが変わります。
あわせて、公開の方法も決めておきましょう。社内の学習管理システム(LMS)に載せるのか、社内ポータルに置くのか、YouTubeの限定公開を使うのかによって、視聴履歴の取り方やセキュリティの考え方が変わります。
ステップ3:構成と台本をつくる
ゴールと受講者が決まったら、動画の構成をつくります。1本ごとのテーマ、話す順番、画面に出すスライドや図、確認テストを入れる位置を一覧にし、関係者で内容を確認します。
講師が話す動画であっても、台本は用意しておくことをおすすめします。一字一句読む必要はありませんが、話す要点と順番を決めておくだけで、撮影の時間が短くなり、言い間違いや撮り直しも減ります。社内の法務や人事のチェックが必要な内容は、この段階で確認を済ませておきましょう。
ステップ4:撮影・収録する
台本が固まったら撮影です。講師が話す動画では、聞き取りやすい音声と、表情が見える明るさが特に重要です。研修動画は長く使われるため、音声が聞き取りにくい、顔が暗いといった問題は、受講者のストレスとして積み重なっていきます。
ピンマイクを使う、静かな部屋を選ぶ、窓の光や照明で顔を明るく照らすといった基本を押さえるだけでも、見やすさは大きく変わります。作業手順を教える動画では、手元のアップと全体の様子を両方撮っておくと、編集でわかりやすく見せられます。
ステップ5:編集する
編集では、不要な間や言い間違いをカットし、スライドや図、字幕、章のタイトルを入れて仕上げます。重要な用語や数字は画面に文字で表示すると、記憶に残りやすくなります。
研修動画では、演出を凝らすことよりも、情報が正確で見やすいことが大切です。社名や製品名、数字、法令名などの表記に誤りがないか、公開前に必ず複数の目で確認しましょう。
ステップ6:公開し、効果を確かめて改善する
公開したら終わりではありません。視聴の完了率、確認テストの正答率、受講者アンケートの声などを見て、分かりにくい部分や、途中で離脱が多い部分を改善していきます。
研修の効果は、最終的には現場での行動の変化に表れます。上司から見て受講者の行動が変わったかどうかを、研修の数か月後に確認する仕組みがあると、研修動画を改善する手がかりになります。
研修動画の主な形式と選び方
研修動画には、いくつかの代表的な形式があります。伝えたい内容と予算に合わせて、適した形式を選びましょう。1本の研修の中で、複数の形式を組み合わせることもできます。
講義型(講師+スライド)
講師が話す映像に、スライドや図を合わせて見せる形式です。知識や考え方を伝える研修に向いており、多くの研修動画で使われています。社内の講師がそのまま出演できるため、比較的短い期間でつくれます。講師の表情とスライドを1画面に並べると、話している人の存在感を残しながら、内容も伝わりやすくなります。
実演型(手元・作業の撮影)
実際の作業や接客の様子を撮影し、手順を見せる形式です。製造現場の作業手順、店舗での接客、機器の操作など、言葉だけでは伝えにくい内容に向いています。良い例と悪い例を並べて見せると、違いが一目で分かります。
ドラマ型(再現シーン)
職場で起こりうる場面を役者が演じ、問題点や正しい対応を考えさせる形式です。ハラスメント防止やコンプライアンス、クレーム対応など、「どこからが問題なのか」を具体的に示したいテーマに向いています。受講者が自分ごととして考えやすい反面、台本づくりやキャスティング、撮影に手間がかかるため、費用は高くなる傾向があります。
アニメーション・図解型
イラストや図を動かして説明する形式です。仕組みや流れなど、目に見えないものを説明するのに向いています。撮影が不要なため、出演者を立てにくい内容や、制度の解説などに使いやすい形式です。一方で、制度が変わったときの修正には、作り直しの手間がかかる場合があります。
画面録画型(システム操作の説明)
パソコンの画面を録画し、操作の手順を説明する形式です。社内システムや業務ツールの使い方を教える研修に向いています。比較的簡単につくれるため、内製しやすい形式の代表です。ただし、システムの画面が変わると作り直しが必要になるため、更新を前提に計画しておきましょう。
研修動画の費用相場と費用を抑えるコツ

研修動画を制作会社に依頼する場合の費用は、形式や本数、撮影の規模によって大きく変わります。ここでは、相場の目安と、費用が変わるポイント、費用を抑えるコツを紹介します。
費用相場の目安
セミナーや研修向けの動画は、10万〜80万円程度が一般的な価格帯です。固定カメラでの講義収録が中心であれば、撮影費を抑えやすい一方、スライドとの合成やチャプター分け、字幕、図解の作成などの編集を加えると、費用は上がっていきます。
ドラマ型で役者を起用する場合や、アニメーションを一からつくる場合は、この範囲を超えることもあります。複数本をまとめて制作する場合は、撮影日をまとめることで1本あたりの費用を抑えられることがあります。
費用が変わるポイント
研修動画の費用は、主に次の要素で変わります。見積もりを比べるときは、総額だけでなく、どの要素が含まれているかを確認しましょう。
- 撮影日数と撮影場所(社内か、スタジオやロケか)
- 出演者(社内の講師か、役者やナレーターを起用するか)
- 本数と1本あたりの長さ
- 編集の内容(スライド合成、字幕、図解、アニメーション)
- 企画・台本づくりをどこまで任せるか
- 修正の回数
費用を抑えるコツ
費用を抑える最も確実な方法は、企画の段階で内容を固めておくことです。撮影後に構成が変わると、撮り直しや編集のやり直しが発生し、費用も時間もかさみます。目的とゴール、受講者、伝える内容を事前に整理してから依頼すると、見積もりの精度も上がります。
また、複数のテーマを同じ日にまとめて撮影する、社内の会議室を撮影場所にする、社内の講師に出演してもらうといった工夫も有効です。毎年変わる部分は社内で更新できる画面録画やスライドにし、変わらない部分だけをプロに撮影してもらう、という分け方もできます。
内製と外注の分け方
すべての研修動画を外注する必要はありません。社内システムの操作説明や、短い連絡事項のような動画は、社内でつくるほうが早く、更新もしやすいでしょう。
一方で、全社員が長く見続ける基幹の研修や、新入社員が最初に見る会社理解の動画、社外の取引先にも見せる教材などは、音声や映像の品質が受講者の印象を左右します。こうした動画はプロに任せ、それ以外は内製するという線引きが、費用と品質のバランスを取りやすい方法です。
研修動画に関するよくある質問

研修動画の導入を検討している方からよくいただく質問に、制作の現場の目線でお答えします。
Q. 研修動画を見ている時間は、労働時間になりますか?
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講は、労働時間として扱うべき時間の例として挙げられています。受講を義務づける研修動画であれば、勤務時間内に見られるように時間を確保するのが基本です。具体的な運用は、社内の労務担当者や社会保険労務士に確認してください。
Q. スマートフォンで見られるようにしたほうがいいですか?
現場で働く社員や外出の多い社員が受講する場合は、スマートフォンでの視聴を前提にすると受講しやすくなります。その場合は、画面の文字を大きめにし、細かい表や長い文章を1画面に詰め込まないようにしましょう。社内の情報を扱う動画は、公開先のセキュリティ設定もあわせて確認が必要です。
Q. 社内の講師が出演しても大丈夫ですか?
問題ありません。むしろ、実際に業務を知っている社員が話すほうが、受講者にとって説得力があり、親しみも持ちやすくなります。話すことに慣れていない方でも、台本を用意し、短く区切って撮影すれば、落ち着いて話せるようになります。プロが撮影する場合は、話し方や目線についてもその場でサポートできます。
Q. 一度つくった研修動画は、どのくらいで見直すべきですか?
決まった期間はありませんが、制度や法令、社内ルール、使っているシステムが変わったときは、必ず見直しましょう。年に一度、研修の担当者が内容を確認する日を決めておくと、古い情報のまま使い続けるのを防げます。最初から短い動画に分けてつくっておくと、見直しの手間も小さくなります。
まとめ:研修動画は「設計」で効果が決まる
研修動画は、教える内容と品質をそろえ、講師と受講者の時間を節約し、何度でも見返せる教材をつくれる方法です。研修のデジタル化が進むなかで、多くの企業にとって欠かせない手段になりつつあります。
一方で、講義をそのまま録画しただけでは、「見るだけで終わる研修」になりかねません。目的とゴールを具体的に決め、短く区切り、冒頭で何が分かるかを伝え、確認テストで理解を確かめる。この設計を丁寧に行うことが、受講者が最後まで見て、現場で行動が変わる研修動画への近道です。
アクエリアス・ムービーでは、研修動画やセミナー動画の企画・撮影・編集をワンストップでお手伝いしています。社内の講師が出演する講義型の動画から、ドラマ型の研修動画まで、目的と予算に合わせた進め方をご提案します。
こんな方は、まず一度ご相談ください
新入社員研修やコンプライアンス研修など、全社員が長く見続ける研修を動画にしたい方、講義を録画してみたものの見づらさや音声の聞き取りにくさが気になっている方は、ぜひ一度お声がけください。どの研修をプロに任せ、どの研修を社内でつくるかの線引きから一緒に考えます。詳しくはアクエリアス・ムービーをご覧ください。
逆に、まだ相談しなくても大丈夫な方
社内システムの操作説明や、短い連絡事項を伝える動画であれば、まずは画面録画などで社内でつくってみるのも良い選択です。また、研修の目的や受講者がまだ社内で決まっていない段階であれば、先に研修全体の設計を固めるほうが、結果的に良い動画につながります。準備が整った段階で、改めてご相談いただければ幸いです。

