
「ショート動画は若い人向けの娯楽で、うちのような法人向けの商材には関係ない」「始めてみたけれど、何を投稿すればいいのか分からず続かない」「再生回数は伸びても、問い合わせにつながっている実感がない」。BtoB企業の広報やマーケティングの担当の方から、こうした声を聞く機会が増えました。縦型のショート動画は、今では企業の情報発信でも無視できない存在になっていますが、BtoCと同じやり方をそのまま当てはめても、成果にはつながりにくいのが実情です。
本記事では、BtoB企業がショート動画に取り組む意味と、YouTubeショートで認知を広げるための考え方を解説します。BtoBならではの目標の置き方、向いているネタ、運用のコツ、作り方の流れ、費用相場と内製・外注の分け方、よくある質問までまとめました。これからショート動画を始める方、すでに始めていて手応えを感じられていない方の判断材料にしてください。
BtoB企業がショート動画に取り組むべき理由
ショート動画とは、縦型で数十秒から数分程度の短い動画のことです。代表的なものに、YouTubeショート、TikTok、Instagramのリールがあります。スマートフォンで指を動かすだけで次々に動画が流れてくるため、自分から検索しない人の目にも触れやすいのが特徴です。まずは、BtoB企業にとってショート動画がなぜ重要なのかを整理しておきましょう。
ショート動画は幅広い世代に見られている
ショート動画は、もはや若い世代だけのものではありません。Googleが公表した「YouTube Recap 2024」によると、国内のYouTubeショートの1日あたりの視聴者数は2023年比で20%以上伸びています。同じ資料で紹介されている調査会社Materialの調査(2023年11月)では、13〜54歳のショート動画サービスの1か月あたりの利用率で、YouTubeショートが62%と最も高い結果でした。
BtoBの商談で決裁に関わることの多い40〜60代でも、ショート動画は日常的に見られています。株式会社ベクトルが2025年12月に全国の40〜60代の男女287名を対象に行った「ショート動画に関する意識調査」では、ショート動画を「よく見る」「ときどき見る」と答えた人の割合は、40代で62.3%、50代で60.8%、60代で50.5%でした。法人向けの商材であっても、意思決定に関わる人の多くが、日々ショート動画に触れていると考えてよいでしょう。
「まだ探していない人」に知ってもらえる
BtoB企業の情報発信は、これまで展示会、Webサイト、ホワイトペーパー、検索広告などが中心でした。これらは、すでに課題を自覚して情報を探している人に届けるには有効ですが、「まだ自社の課題に気づいていない人」や「そもそもその会社を知らない人」には届きにくいという弱点があります。
ショート動画は、見る人の興味に合わせて動画が次々と表示される仕組みのため、検索されるのを待たずに、まだ自社を知らない人の目に触れる機会をつくれます。BtoBの購買は検討期間が長く、「いざ探し始めたときに思い出してもらえるか」が勝負になります。その前段階で社名や顔を覚えてもらう手段として、ショート動画は相性が良いのです。
長尺動画への入り口になる
ショート動画は、それだけで商談を生むものではありません。むしろ、詳しい内容を伝える長尺動画や、Webサイト、資料請求への入り口として機能します。先ほどの「YouTube Recap 2024」では、69%の人がYouTubeショートで好きなものを見つけ、その後に長尺の動画を視聴していると紹介されています。
BtoBの商材は、仕組みや導入効果を説明するのにある程度の時間が必要です。ショートで興味を持ってもらい、長尺動画やWebサイトでじっくり理解してもらう。この役割分担を前提にすると、ショート動画で何を伝えるべきかが見えてきます。
BtoCとは違う、BtoBショート動画の目標の置き方

BtoB企業のショート動画が続かない、成果が見えないと感じる理由の多くは、目標の置き方にあります。再生回数やフォロワー数だけを追いかけると、BtoCのように数字が伸びないことに落胆し、数か月で更新が止まってしまいがちです。ここでは、BtoBならではの目標の考え方を紹介します。
再生回数よりも「誰に見られたか」を重視する
BtoCの商材であれば、多くの人に見られるほど売上につながる可能性が高まります。一方、BtoBの商材は、そもそも買う可能性がある人の数が限られています。工場向けの設備や、人事部向けのサービスであれば、見てほしい相手は世の中のごく一部です。
そのため、100万回再生されても、見た人が自社の顧客になり得ない層ばかりでは意味がありません。逆に、再生回数が数百回でも、見た人の多くが業界関係者であれば、十分に価値があります。BtoBのショート動画は、「何回見られたか」よりも「誰に見られたか」を意識して企画することが大切です。
BtoBで追いかけたい指標
BtoBのショート動画では、再生回数のほかに、次のような指標を組み合わせて効果を見ていくことをおすすめします。いずれも、ショート動画が「入り口」として機能しているかを確かめるためのものです。
- 長尺動画やWebサイトへの移動数
- チャンネル登録者数の増え方
- 社名やサービス名での検索数(指名検索)の変化
- 問い合わせや資料請求の際に「動画を見た」と言われた件数
- 採用応募者から動画について触れられた件数
特に、商談や面接の場で「動画を見ました」と言われる回数は、数字では見えにくい効果をつかむ手がかりになります。営業担当や採用担当と連携して、記録を残しておくとよいでしょう。
成果が出るまでの期間を見込んでおく
ショート動画は、数本投稿しただけで成果が出るものではありません。どのような動画が見られるのかを試しながら、少しずつ反応の良い型を見つけていく必要があります。始める前に、少なくとも数か月は続けることを社内で合意しておくと、途中で「効果が出ないからやめよう」という判断になりにくくなります。
BtoB企業に向いているショート動画のネタ

「何を投稿すればいいか分からない」というのは、BtoB企業が最もつまずきやすい点です。しかし実際には、BtoB企業の社内には、外の人から見ると新鮮なネタがたくさん眠っています。ここでは、BtoB企業で取り入れやすいネタを紹介します。
製品の「動いている瞬間」を見せる
製品のカタログやWebサイトには、静止画とスペックが並んでいることが多いものです。ショート動画では、製品が実際に動いている様子、加工される瞬間、使う前と使った後の違いなどを短く見せられます。言葉で説明すると長くなる特徴も、映像なら数秒で伝わることがあります。
現場や工場の裏側を見せる
製造の工程、職人の手さばき、検査の様子、物流の現場など、普段は外から見えない仕事の様子は、業界外の人にとっても興味を引きやすい題材です。「この部品はこうやってつくられている」という映像は、技術力や品質へのこだわりを伝えるとともに、採用の面でも会社の雰囲気を知ってもらうきっかけになります。
ただし、撮影してよい範囲は事前に必ず確認しましょう。取引先の情報や、公開できない技術が映り込まないよう、社内の関係部署と撮影前にすり合わせておくことが欠かせません。
専門知識を短く解説する
「業界用語を30秒で解説」「よくある失敗とその対策」「導入前に確認したいポイント」など、自社の専門分野に関する知識を短く伝える動画も、BtoB企業に向いています。役に立つ情報を発信し続けることで、「この分野ならこの会社に聞けばいい」という印象を持ってもらえます。
1本で1つのことだけを伝えるのがポイントです。たくさんの情報を詰め込むと、短い時間では伝わりきりません。
よくある質問に答える
営業の現場や問い合わせ窓口で、何度も聞かれる質問はありませんか。その質問と答えを1本ずつ動画にすると、検討中の人が知りたい情報をそのまま届けられます。営業担当や窓口の担当者に、よく聞かれる質問を挙げてもらうだけで、ネタの一覧ができあがります。
社員の顔と人柄を見せる
BtoBの取引は、最終的に「この人たちと仕事をしたいか」で決まる面があります。社員が自分の仕事を紹介する、仕事のこだわりを語るといった動画は、会社の顔を知ってもらうのに役立ちます。採用活動にもそのまま活かせるため、一つの動画で営業と採用の両方に効果が期待できます。
長尺動画やセミナーから切り出す
すでにYouTubeの長尺動画、ウェビナー、セミナーの録画などがある場合は、その中から印象的な発言や要点を切り出してショート動画にする方法もあります。新しく撮影しなくてもネタを増やせるうえ、ショートから元の長尺動画に誘導する流れも自然につくれます。
YouTubeショートで認知を広げる運用のコツ
ショート動画を投稿する場所はいくつかありますが、BtoB企業がまず取り組みやすいのはYouTubeショートです。長尺動画と同じチャンネルで運用でき、ショートから長尺へ、長尺から問い合わせへという流れを一つの場所でつくれるためです。ここでは、YouTubeショートを運用するうえでのコツを紹介します。
YouTubeショートの基本を押さえる
YouTubeショートは、縦型または正方形の動画として投稿します。YouTubeの公式発表によると、2024年10月15日以降に投稿された動画から、ショートの長さは最長3分まで延びました。以前は最長60秒だったため、「ショート=1分以内」という印象を持っている方もいるかもしれません。
ただ、長くできるようになったからといって、長くすればよいわけではありません。BtoBの解説動画であっても、伝えたいことを1つに絞り、できるだけ短くまとめるほうが最後まで見てもらいやすくなります。
冒頭の数秒で「何の動画か」を伝える
ショート動画は、見る人が指一本で次の動画に移れます。最初の数秒で「自分に関係がある」と感じてもらえなければ、すぐに次の動画に流されてしまいます。
冒頭には、あいさつや社名の紹介を置くのではなく、「工場の〇〇担当者が一番困ること」「導入前に9割の人が見落とすポイント」のように、見る人が自分ごととして受け取れる一言を置きましょう。画面に大きな文字で表示しておくと、音を出していない人にも伝わります。
字幕は必須と考える
ショート動画は、電車の中や職場の休憩中など、音を出せない場所で見られることが少なくありません。話している内容を字幕で表示しておけば、音声なしでも内容が伝わります。専門用語や数字の聞き間違いを防げるのも、BtoBの動画では大きな利点です。
字幕の文字は、スマートフォンの小さな画面でも読める大きさにし、画面の下端や右端に寄せすぎないようにしましょう。アプリの操作ボタンや説明文と重なって、読めなくなることがあります。
ショートから長尺動画へ誘導する
YouTubeでは、ショート動画に「関連動画」として別の動画を設定し、視聴者をその動画へ誘導できる機能が2024年1月に追加されました。YouTube Studioのコンテンツ一覧から設定できます。ショートで興味を持った人を、詳しく解説した長尺動画や、事例紹介の動画へ案内するのに便利です。
ショートの最後に「詳しくは関連動画で解説しています」と一言添えると、移動してもらいやすくなります。ショートだけで完結させず、次に見てほしいものを必ず用意しておくことが、BtoBのショート動画運用の基本です。
投稿の頻度と型を決める
ショート動画は、1本ごとの反応にばらつきが出やすいものです。そのため、1本の出来に一喜一憂するよりも、無理なく続けられる頻度を決め、継続して投稿することのほうが大切です。
「月曜は用語解説、木曜は現場紹介」のように、曜日ごとに型を決めておくと、毎回ネタを一から考える負担が減ります。数か月続けたら、反応の良かった型を増やし、反応の悪かった型を減らしていきましょう。
ショート動画の作り方|企画から投稿までの流れ

ショート動画は短いぶん、手軽につくれると思われがちです。しかし、短い時間で伝えるためには、何を伝え、何を削るかを事前に決めておく必要があります。ここでは、企画から投稿までの基本的な流れを紹介します。
ステップ1:目的と届けたい相手を決める
最初に、「誰に」「何を知ってもらい」「次にどうしてほしいのか」を決めます。たとえば「製造業の設備担当者に、自社の保守サービスの存在を知ってもらい、長尺の事例動画を見てもらう」のように、届けたい相手と次の行動まで具体的にしておくと、動画の内容がぶれません。
ステップ2:ネタを一覧にして台本をつくる
次に、投稿するネタを10〜20本ほど一覧にします。先に紹介した「製品」「現場」「専門知識」「よくある質問」「社員」などの切り口ごとに、営業や現場の社員からネタを集めると効率的です。
ネタが決まったら、1本ごとに短い台本をつくります。冒頭の一言、伝える要点、最後に案内する先の3つを決めておくだけでも、撮影がスムーズになります。
ステップ3:まとめて撮影する
ショート動画は、1日で複数本をまとめて撮影するのが効率的です。同じ場所、同じ出演者で、台本を変えながら続けて撮影すれば、1本あたりの手間を大きく減らせます。
撮影はスマートフォンでもできますが、音声が聞き取りにくい、顔が暗いといった問題は、短い動画でも見る人の離脱につながります。ピンマイクを使う、明るい場所や照明を選ぶといった基本を押さえるだけでも、見やすさは変わります。最初から縦型で撮影する場合と、横型で撮影して縦に切り出す場合があるため、使い道に合わせて撮り方を決めておきましょう。
ステップ4:編集して投稿する
編集では、不要な間を詰めてテンポを整え、字幕や見出しの文字を入れます。ショート動画では、間延びした部分があるとすぐに離脱されるため、長尺動画よりも細かくカットしていくのが一般的です。
投稿時には、動画の内容が分かるタイトルを付け、関連動画の設定も忘れずに行いましょう。社名や製品名、数字の表記に誤りがないか、公開前に複数の目で確認することも大切です。
ステップ5:反応を見て改善する
投稿したら、YouTube Studioで視聴回数、視聴維持率、関連動画への移動などを確認します。どの冒頭の一言で最後まで見られているか、どのネタで長尺動画に移動されているかを見比べると、次に何をつくればよいかが見えてきます。
ショート動画の費用相場と内製・外注の分け方

ショート動画を制作会社に依頼する場合の費用は、企画や撮影の有無、本数によって大きく変わります。ここでは、費用の目安と、内製と外注の分け方を紹介します。
費用相場の目安
SNS向けのショート動画は、1本あたり5万〜30万円程度が相場です。企画から撮影、編集まで一式を依頼するか、手持ちの素材の編集だけを依頼するかによって、金額は変わります。
月額の運用として10〜20本程度をまとめて依頼する場合は、月20万〜100万円程度の予算が必要になります。まとめて依頼すると、撮影日をまとめられるため、1本あたりの費用を抑えやすくなります。
費用が変わるポイント
ショート動画の費用は、主に次の要素で変わります。見積もりを比べるときは、総額だけでなく、どこまでが含まれているかを確認しましょう。
- 企画・台本づくりを任せるかどうか
- 新しく撮影するか、既存の動画から切り出すか
- 撮影の日数と場所
- 本数と1本あたりの長さ
- 字幕やテロップ、図解などの編集の内容
- 投稿や効果の分析まで任せるかどうか
内製と外注の分け方
ショート動画は数を出すことが大切なため、すべてを外注すると費用がかさみます。日々の現場の様子や、社員が手軽に話す動画は、スマートフォンで社内で撮影し、簡単な編集で投稿するほうが早く、鮮度も保てます。
一方で、チャンネルの方向性や動画の型を決める最初の段階、会社の顔になる製品紹介やブランドの動画、長尺動画からの切り出しなどは、プロに任せることで品質が安定します。最初の数か月はプロと一緒に型をつくり、型が固まったら一部を社内に移していく、という進め方も有効です。
BtoB企業のショート動画に関するよくある質問

ショート動画の導入を検討しているBtoB企業の方からよくいただく質問に、制作の現場の目線でお答えします。
Q. YouTubeショート、TikTok、Instagramのどれから始めるべきですか?
BtoB企業であれば、まずはYouTubeショートから始めることをおすすめします。長尺動画と同じチャンネルで運用でき、ショートから詳しい解説動画へ誘導しやすいためです。届けたい相手が若い世代に偏っている場合や、採用を主な目的とする場合は、TikTokやInstagramを組み合わせることも検討するとよいでしょう。同じ動画を複数の場所に投稿することもできます。
Q. 社員が出演しても大丈夫ですか?
問題ありません。むしろ、実際に仕事をしている社員が話すほうが、見る人にとって説得力があり、親しみも持ちやすくなります。ただし、出演する社員には事前に動画の使い道と公開範囲を説明し、同意を得ておきましょう。退職した後の動画の扱いについても、あらかじめ社内でルールを決めておくと安心です。
Q. 長尺動画がなくても始められますか?
始められます。ショート動画だけでも、社名や製品を知ってもらうきっかけはつくれます。その場合は、ショートの誘導先として、Webサイトのサービス紹介ページや事例のページを用意しておきましょう。ショート動画で反応の良かったテーマを、後から長尺動画として詳しくつくる、という順番も効率的です。
Q. 炎上が心配です。何に気を付ければいいですか?
BtoB企業のショート動画で特に気を付けたいのは、取引先や顧客の情報の映り込み、他社を貶める表現、根拠のない数字や効果の断定です。公開前に、広報や法務など複数の部署で確認する流れを決めておくと安心です。流行りの音源や表現を使う場合は、権利や使用条件も確認しましょう。
まとめ:BtoBのショート動画は「入り口」として設計する
ショート動画は、幅広い世代に見られており、BtoB企業にとっても、まだ自社を知らない人に社名や顔を覚えてもらう有効な手段です。一方で、BtoCと同じように再生回数だけを追いかけると、成果が見えないまま更新が止まってしまいがちです。
誰に届けたいのかを決め、製品・現場・専門知識・よくある質問・社員といった自社ならではのネタで、短く分かりやすい動画を続けていく。そして、ショートで興味を持った人を長尺動画やWebサイトへ案内する流れを用意しておく。この設計が、BtoBのショート動画を商談や採用につなげる近道です。
アクエリアス・ムービーでは、YouTubeチャンネルの企画・撮影・編集から、長尺動画を活かしたショート動画の制作まで、ワンストップでお手伝いしています。目的と予算に合わせて、どこまでをプロに任せ、どこからを社内で回すかの線引きもご提案します。
こんな方は、まず一度ご相談ください
ショート動画を始めたいけれど、何を投稿すればよいか決めきれない方、すでにYouTubeの長尺動画やセミナー動画があり、それを活かしてショート動画を増やしたい方は、ぜひ一度お声がけください。チャンネルの方向性や動画の型づくりから一緒に考えます。詳しくはアクエリアス・ムービーをご覧ください。
逆に、まだ相談しなくても大丈夫な方
日々の現場の様子を気軽に発信したい段階であれば、まずはスマートフォンで社内で撮影し、投稿してみるのも良い選択です。また、ショート動画で誰に何を届けたいのかがまだ社内で決まっていない段階であれば、先に目的と届けたい相手を整理するほうが、結果的に良い動画につながります。準備が整った段階で、改めてご相談いただければ幸いです。

