
「来年は創業50周年。式典で流す映像を作りたいが、何から手を付ければいいのか分からない」「昔の写真を並べるだけの動画にはしたくない」「せっかく作るなら、式典のあとも使える動画にしたい」。周年事業を担当する総務や広報、経営企画の方から、こうしたご相談をいただくことがあります。
周年記念動画は、会社の歩みを振り返り、これまで支えてくれた社員や取引先に感謝を伝え、次の時代に向けた思いを共有するための映像です。一方で、周年事業は何年かに一度しか巡ってこないため、社内に作り方のノウハウが残っていないことがほとんどです。準備を始めるのが遅れて、写真を集めるだけで時間切れになってしまうケースも少なくありません。
本記事では、周年記念動画の役割と種類、見る人に合わせた構成の考え方、心に残る動画にするためのアイデア、準備から上映までの流れ、費用の目安と注意点までを解説します。周年記念動画の制作を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
周年記念動画とは?企業が節目に動画を作る理由

周年記念動画とは、創業や設立から10年、50年、100年といった節目を迎えた企業が、その歩みと感謝、これからの思いを伝えるために作る映像のことです。記念式典やパーティーで上映するほか、社内報やWebサイト、採用活動などでも使われます。
周年記念動画が果たす3つの役割
周年記念動画には、大きく分けて3つの役割があります。1つ目は、会社の歩みを振り返り、創業の思いや大切にしてきた価値観を社員と共有することです。2つ目は、社員や取引先、お客様、地域の方々など、これまで会社を支えてくれた人たちに感謝を伝えることです。3つ目は、これから会社がどこへ向かうのかというビジョンを示し、次の10年に向けて社内の気持ちをそろえることです。
この3つのうち、どれをいちばん大切にするかによって、動画の構成や登場する人、上映する場が変わってきます。
周年を迎える企業は毎年たくさんある
周年は、特別な一部の会社だけのものではありません。帝国データバンクの調査によると、2026年に10年刻みの節目の周年を迎える企業は、2025年11月時点で全国に14万5,159社あります。このうち20周年を迎える企業が2万6,663社で最も多く、50周年は1万7,939社、100周年は2,371社にのぼります。
中小企業にとっても、周年は社員や取引先に改めて感謝を伝え、会社の歩みを形に残すことができる貴重な機会だといえます。
冊子の社史と動画の違い
周年の記念として、冊子の社史や記念誌を作る会社も多くあります。冊子は、年表や数字、出来事を正確に記録し、後から調べるのに向いています。一方で動画は、創業者の声や表情、工場の音、社員の笑顔など、文字では伝えきれない「空気」を残すことができます。式典の会場で全員が同じ映像を見て、同じ瞬間に心を動かされるという体験を作れるのも、動画ならではの強みです。
周年記念動画の主な種類

ひとことで周年記念動画といっても、内容や形式にはいくつかの種類があります。目的に合わせて、1本にまとめるのか、複数を組み合わせるのかを考えましょう。
社史・沿革をたどるヒストリー動画
創業から現在までの出来事を、年代順にたどっていく動画です。創業当時の写真や昔の製品、新聞記事、社屋の移り変わりなどを映しながら、会社の歩みを紹介します。周年記念動画の中で最もよく作られる形式ですが、出来事を順番に並べるだけでは単調になりやすいため、「どんな困難を、どう乗り越えてきたか」という物語の軸を持たせることが大切です。
社員やOBのインタビュー動画
長く会社を支えてきたベテラン社員やOB、若手社員などに、会社への思いや印象に残っている出来事を語ってもらう動画です。同じ会社の歴史でも、人の言葉で語られると一気に身近なものになります。創業者や先代の経営者に話を聞ける機会があれば、それ自体が会社にとって貴重な記録になります。
トップメッセージ・ビジョン動画
社長や経営陣が、これまでの感謝と、これからの会社の方向性を語る動画です。式典の締めくくりに流したり、社内向けの動画として配信したりします。原稿を読み上げるだけの動画にならないよう、インタビュー形式で話を引き出したり、現場の映像と組み合わせたりする工夫が効果的です。
式典のオープニング映像
記念式典やパーティーの冒頭で流す、短い映像です。会場の照明が落ち、映像が始まった瞬間に場の空気が切り替わります。会社のロゴや周年のスローガン、印象的な写真や映像を音楽に合わせてテンポよく見せ、参加者の気持ちを式典に向けて高めていきます。
取引先・お客様からのメッセージ動画
長く付き合いのある取引先やお客様から、お祝いのメッセージをいただいて1本にまとめる動画です。社員にとっては、自分たちの仕事が社外からどう見られているのかを知る機会になります。依頼から撮影までに時間がかかるため、早めに声をかけておくことが欠かせません。
誰に見せるかで変わる構成のポイント
周年記念動画は、誰に向けて作るかによって、伝えるべき内容や話し方が大きく変わります。ここでは、主な3つの相手ごとに構成のポイントを紹介します。
社員に向けて作る場合
社員向けの動画では、「自分たちがこの歴史の一部である」と感じてもらえるかどうかが鍵になります。会社の大きな出来事だけでなく、現場で働く社員の姿や声をできるだけ多く映すことで、見る人が自分ごととして受け止めやすくなります。部署や拠点ごとに登場する人の偏りが出ないよう、事前にバランスを確認しておきましょう。
取引先やお客様に向けて作る場合
取引先やお客様が多く参加する式典で流す動画では、まず「支えていただいたことへの感謝」を伝えることが中心になります。社内の出来事を細かく紹介しすぎると、社外の人には分かりにくくなってしまいます。会社が社会や取引先にどんな価値を届けてきたのか、これから何を約束するのかを、分かりやすい言葉でまとめることが大切です。
採用候補者や社外の人に向けて作る場合
周年記念動画を、式典のあとに採用サイトや会社のWebサイトでも使いたい場合は、会社のことを知らない人が見ても伝わる構成にする必要があります。社内でしか通じない言葉や略称を使わず、創業の思いと現在の仕事、これからのビジョンが一続きで理解できるようにまとめましょう。最初から式典用と社外向けの2つのバージョンを作る前提で計画しておくと、撮影や編集を効率よく進められます。
複数の相手に見せるときは、いちばん届けたい人を1つに決める
周年の式典には、社員、OB、取引先、地域の方など、さまざまな立場の人が集まります。すべての人に同じだけ響く動画を作ろうとすると、伝えたいことが散らばり、結局だれの心にも残らない動画になりがちです。まずは「この動画をいちばん届けたいのは誰か」を1つに決め、その人に向けて構成を組み立てましょう。そのうえで、ほかの参加者にも伝わるように言葉や説明を補っていくと、軸のぶれない動画になります。届けたい相手が大きく異なる場合は、無理に1本にまとめず、目的ごとに動画を分けることも検討してください。
心に残る周年記念動画の構成とアイデア

周年記念動画を「昔の写真のスライドショー」で終わらせないためには、構成とアイデアに少し工夫が必要です。ここでは、基本の構成と、取り入れやすいアイデアを紹介します。
基本の構成は「過去・現在・未来」
周年記念動画の構成は、「過去・現在・未来」の3つに分けて考えると組み立てやすくなります。過去では、創業の思いやこれまでの歩み、乗り越えてきた困難を伝えます。現在では、いま会社を支えている社員の仕事ぶりや、お客様に届けている価値を映します。未来では、これからの会社が目指す姿と、次の節目に向けた決意を示します。過去だけで終わらせず、未来で締めくくることで、見る人の気持ちが前向きになる動画になります。
創業当時と同じ場所・同じ構図で「今」を撮る
創業当時の写真が残っていれば、同じ場所、同じ構図で今の様子を撮影し、並べて見せる方法がおすすめです。昔の写真から今の映像へと切り替わる瞬間に、会社が歩んできた時間の長さが一目で伝わります。社屋や工場、店舗の前に、当時と同じように社員が並んで撮影するのも、周年記念動画ならではの演出です。
社員の「ひとこと」をリレーでつなぐ
多くの社員に登場してもらいたい場合は、一人ひとりに短いひとことを話してもらい、リレーのようにつないでいく方法が効果的です。「入社して一番うれしかったこと」「この会社の好きなところ」など、全員に同じ問いかけをすると、つないだときに一体感が生まれます。スマートフォンで撮った映像を集める方法もありますが、画質や音声がそろわなくなるため、可能であれば撮影日を設けてまとめて撮るほうが仕上がりは安定します。
昔の製品や資料、道具に語らせる
創業当時の製品や手書きの図面、使い込まれた道具、古い名刺や制服など、会社に残っている「モノ」は、周年記念動画の大切な素材になります。モノをていねいに撮影し、それにまつわるエピソードを社員に語ってもらうと、年表だけでは伝わらない会社の歴史が浮かび上がります。倉庫や資料室に眠っているものがないか、早めに探しておきましょう。
未来を語るのは若手社員に任せる
動画の最後に「これからの会社」を語る場面では、社長だけでなく若手社員に登場してもらうのも一つの方法です。次の節目を担う世代の言葉で未来を語ることで、会社がこれからも続いていくことを自然に伝えられます。ベテラン社員が語る過去と、若手社員が語る未来を対比させると、世代をつなぐ構成になります。
周年記念動画の作り方:準備から上映までの流れ

周年記念動画の制作は、一般的な企業動画よりも準備に時間がかかります。古い写真や資料を探したり、多くの人に出演を依頼したりする必要があるからです。式典の日から逆算して、余裕をもって半年ほど前から動き始めるのが安心です。
ステップ1:目的と見る人、上映の場を決める
最初に、動画で何を伝えたいのか、誰に見てもらうのか、どこで上映するのかを決めます。式典の会場で流すのか、オンラインで配信するのか、式典のあとにWebサイトでも使うのかによって、動画の長さや構成、画面の比率まで変わってきます。周年事業全体のテーマやスローガンがあれば、動画もそれに合わせて考えましょう。
ステップ2:写真・映像・資料を集める
周年記念動画で最も時間がかかるのが、素材集めです。創業当時の写真や昔の社内行事の映像、新聞や雑誌の掲載記事、製品カタログなどを、社内やOBに声をかけて集めます。古い写真はアルバムや額縁に入ったままのことも多く、スキャンしてデータにする作業も必要です。たとえば、次のようなものが素材になります。
- 創業当時や社屋・工場の移り変わりがわかる写真
- 社員旅行や式典、社内行事の写真・映像
- 歴代の製品やカタログ、パンフレット、広告
- 新聞・雑誌の掲載記事や、受賞の記録
- 創業者の手紙やメモ、昔の名刺や制服などの記念品
集めた素材は、年代や内容ごとに整理しておくと、構成を考えるときに役立ちます。
ステップ3:企画・構成・台本をつくる
集まった素材と目的をもとに、動画の構成を考えます。どの時代をどのくらいの長さで紹介するのか、誰にどんな話をしてもらうのか、ナレーションを入れるのかを決め、台本や絵コンテにまとめます。この段階で、社内の関係者に内容を確認してもらい、出来事の年や人の名前、肩書きに誤りがないかをしっかりチェックしておきましょう。
ステップ4:インタビューや現在の様子を撮影する
社長や社員、OBのインタビュー、現在の職場や仕事の様子、社屋や工場の外観などを撮影します。出演する人が多い場合は、撮影日をまとめて設けると、照明やカメラの準備を一度で済ませられます。インタビューでは、事前に質問を伝えておくと、話す内容を考えておいてもらえるため、落ち着いて話してもらいやすくなります。
ステップ5:編集・試写・修正を行う
撮影した映像と集めた写真や資料を組み合わせ、BGMやテロップ、ナレーションを加えて編集します。古い写真は、ゆっくり動かしたり拡大したりする演出を加えると、映像としての見やすさが上がります。編集が終わったら、関係者で試写を行い、内容の誤りや表現の違和感がないかを確認したうえで修正します。式典で上映する場合は、本番と同じ会場の機材で再生できるかも事前に確かめておきましょう。
ステップ6:上映し、式典のあとも活用する
式典で上映したあとも、周年記念動画は会社の大切な資産になります。社内報や社内ポータルで配信して式典に参加できなかった社員にも届けたり、会社のWebサイトや採用サイトに掲載したり、新入社員研修で会社の歴史を伝える教材として使ったりすることができます。式典のあとの使い道まで考えて作ることで、周年記念動画の価値は大きく広がります。
周年記念動画の費用の目安と注意点
周年記念動画を制作会社に依頼する場合の費用と、制作を進めるうえで気をつけたい点を紹介します。
費用の目安
周年記念動画の費用は、撮影の有無や出演する人数、動画の長さによって大きく変わります。手元にある写真や映像を中心に、テロップと音楽で構成するシンプルな動画であれば、10万〜50万円ほどが目安です。インタビューや現在の職場の撮影を加え、ストーリーのある動画にする場合は、50万〜150万円ほどになることが多くあります。複数の拠点での撮影や大人数の出演、ドラマ仕立ての演出などを加える場合は、150万〜300万円を超えることもあります。
費用を抑えたい場合は、撮影日を1日にまとめる、式典用と社外向けの動画を同じ撮影素材から作るなど、制作の進め方を工夫することで、限られた予算の中でも満足度の高い動画を作ることができます。
古い写真・映像・音楽の権利を確認する
周年記念動画では、古い写真や映像を多く使いますが、その中には社外の写真家が撮影したものや、新聞や雑誌に掲載された写真、テレビ番組の映像などが含まれていることがあります。こうした素材は、会社が持っているものであっても、著作権が撮影者や出版社にある場合があります。社外向けに公開する動画で使う場合は特に、使ってよい素材かどうかを事前に確認しましょう。BGMも同様に、市販の楽曲を使う場合は権利の手続きが必要になるため、利用条件が明確な音源を選ぶのが安心です。
退職した方や故人の写真の扱いに配慮する
会社の歴史をたどると、すでに退職した方や亡くなった方の写真が多く登場します。社内の式典だけで上映する場合でも、ご本人やご家族の気持ちに配慮し、必要に応じて事前に了解を得ておくことが大切です。Webサイトなどで社外に公開する場合は、写っている人の了解がとれていない写真を使わないようにしましょう。
長くしすぎず、見る人の集中を保つ
伝えたいことが多い周年記念動画は、どうしても長くなりがちです。しかし、式典の会場で流す動画が長すぎると、見る人の集中が途切れてしまいます。すべての出来事を入れようとせず、伝えたいテーマに沿って内容を絞り込むことが、心に残る動画にするための近道です。年表や詳しい記録は、冊子の社史やWebサイトに任せるという分担も考えてみましょう。
上映する会場の環境を早めに確認する
式典で上映する動画は、会場のスクリーンやプロジェクター、音響の設備によって見え方や聞こえ方が大きく変わります。スクリーンの縦横の比率が動画と合っていないと、映像の上下や左右に余白が出たり、端が切れたりすることがあります。また、会場の音響によっては、インタビューの声が聞き取りにくくなることもあります。会場が決まったら、スクリーンの比率や再生する機材、ファイルの形式、音声の出し方を早めに確認し、制作会社にも共有しておきましょう。可能であれば、本番前に会場でリハーサルを行い、実際に映像と音を流して確かめておくと安心です。
よくある質問

Q. 周年記念動画の長さはどのくらいがよいですか?
上映する場と目的によって変わります。式典のオープニング映像であれば、短くテンポよくまとめるのが一般的です。会社の歩みをじっくり伝えるヒストリー動画やインタビュー動画は、それより長くなりますが、見る人の集中を保てる長さに収めることが大切です。式典の進行表の中で、動画にどのくらいの時間を割けるかを先に確認しておきましょう。
Q. 創業当時の写真がほとんど残っていなくても作れますか?
作ることはできます。OBやご家族の手元に写真が残っていることもあるため、まずは社内外に声をかけて探してみましょう。それでも素材が少ない場合は、昔を知る社員やOBのインタビューで当時のエピソードを語ってもらったり、昔の製品や道具を撮影したりすることで、写真が少なくても歴史が伝わる動画にできます。
Q. 式典の日が迫っていますが、まだ間に合いますか?
残された期間によって、できることが変わります。期間が短い場合は、撮影を最小限にして手元の写真や映像を中心に構成する、インタビューの人数を絞るなど、内容を調整することで間に合わせられることがあります。まずは式典の日と、動画で伝えたいことを制作会社に伝えて相談してみてください。
Q. 社内で作ることはできますか?
写真のスライドショーのようなシンプルな動画であれば、社内で作ることもできます。一方で、インタビューの撮影や音声の収録、古い写真を生かした演出、式典の大きなスクリーンで映しても見劣りしない画質や音質が必要な場合は、制作会社に依頼したほうが安心です。素材集めは社内で行い、構成から撮影・編集を制作会社に任せるといった分担もできます。
まとめ:周年記念動画は「感謝」と「これから」を伝える節目の資産
周年記念動画は、会社の歩みを振り返り、支えてくれた人たちに感謝を伝え、次の時代に向けた思いを共有するための映像です。誰に見せるのかを決め、「過去・現在・未来」の流れで構成し、社員の声や昔のモノ、今の職場の姿を組み合わせることで、単なる写真のスライドショーではない、心に残る動画になります。
周年事業は何年かに一度しかない機会です。素材集めや出演の依頼には想像以上に時間がかかるため、早めに準備を始めることが成功の鍵になります。式典で上映したあとも、社内報や採用、研修などで長く使える動画として計画しておくと、周年記念動画は会社の大切な資産になります。
アクエリアス・ムービーでは、周年記念動画をはじめ、会社紹介や採用、ブランドの動画を、企画・構成から撮影、編集まで一貫してお手伝いしています。何を伝えるべきか、どんな形式が合っているかといった段階から、一緒に考えます。
こんな方は、まず一度ご相談ください
周年の式典で上映する動画を作りたい方や、式典のあとも採用やWebサイトで使える動画にしたい方、何から準備を始めればよいか分からない方は、ぜひ一度お声がけください。式典の日程や伝えたい思いをうかがったうえで、素材集めの進め方から構成、撮影、編集までを含めてご提案します。詳しくはアクエリアス・ムービーをご覧ください。
逆に、まだ相談しなくても大丈夫な方
周年までまだ数年あり、何をするか決まっていない段階であれば、まずは社内に残っている写真や資料を探し、整理しておくことから始めてみてください。それだけでも、いざ動画を作るときの準備が大きく進みます。周年事業の内容が見えてきて、動画で何を伝えたいかが固まってきたら、改めてご相談いただければ幸いです。

