
「せっかく作った動画なのに、音を出さずに見られていて内容が伝わっていない気がする」「テロップを入れたいが、どこまで文字にすればいいのか分からない」「自分で入れてみたら、文字が読みにくくて素人っぽくなってしまった」。企業の広報や人事、マーケティングの担当者から、動画の文字についてこうしたご相談をよくいただきます。
動画に入れる文字は、内容を正確に伝えるための大事な道具です。電車の中や職場など、音を出せない場所で動画を見る人にとっては、文字が唯一の情報源になることもあります。一方で、文字を入れすぎると画面がうるさくなり、肝心の映像が見えなくなってしまいます。入れ方ひとつで、動画の分かりやすさも、会社の印象も大きく変わります。
本記事では、テロップと字幕の違い、企業動画に文字を入れるべき理由、何をどこまで文字にするかの決め方、最後まで読まれるデザインのコツ、媒体ごとの考え方、そして自社で入れるかプロに頼むかの判断のポイントまでを、動画制作会社の立場から解説します。これから動画を作る方も、今ある動画を見直したい方も、ぜひ参考にしてください。
テロップと字幕の違いとは?まずは言葉を整理しよう
動画の文字は、「テロップ」と「字幕」という2つの呼び方で話されることが多く、制作会社とのやり取りでも混同されがちです。依頼するときに意図が正しく伝わるよう、まずは言葉の違いを整理しておきましょう。
テロップ:映像に焼き付けて、いつも表示される文字
テロップは、編集の段階で映像そのものに書き込む文字です。一度書き出すと映像と一体になるため、どの再生環境でも必ず表示され、見る人が消すことはできません。タイトル、出演者の名前と肩書き、話のポイントの強調など、デザインの一部として見せたい文字はテロップで入れるのが一般的です。英語では「オープンキャプション」とも呼ばれます。
字幕:見る人が表示・非表示を切り替えられる文字
一方、ここで言う字幕は、映像とは別のデータとして用意し、見る人が必要に応じて表示を切り替えられる文字です。YouTubeの字幕ボタンで表示する文字や、テレビのリモコンの「字幕」ボタンで出てくる文字がこれにあたり、「クローズドキャプション」と呼ばれます。字幕付きCM普及推進協議会の資料でも、テレビCMの字幕(CC=クローズドキャプション)は、画面に表示される文字情報(OC=オープンキャプション)とは違うものとして説明されています。
企業動画に入る文字の主な種類
企業動画で使われる文字は、役割で分けると次のようなものがあります。
- 動画やチャプターのタイトル
- 出演者の名前・肩書き
- 話している内容の書き起こし
- 話のポイントを短くまとめた要約
- 数字や専門用語の補足、注釈
- 問い合わせ先やURLなどの案内
それぞれ役割が違うため、すべてを同じ大きさ・同じデザインで入れると、どれが大事な情報なのか分からなくなります。何のための文字なのかを意識して入れ分けることが、読みやすい動画への第一歩です。
企業動画にテロップ・字幕を入れるべき3つの理由

テロップや字幕は、見た目を整えるための飾りではありません。企業動画で文字を入れることには、はっきりとした理由があります。
音を出さずに動画を見る人が多いから
スマートフォンで動画を見る人の多くは、周りを気にして音を出さずに再生しています。Verizon Media(当時)とPublicis Mediaが2019年に米国の18〜54歳を対象に行った調査によると、公共の場所では69%の人が音を出さずに動画を見ていると回答しています。また同じ調査では、80%の人が「字幕があれば、動画を最後まで見る可能性が高くなる」と答えています。
音なしで再生されたとき、ナレーションやインタビューの声だけで内容を伝える動画は、何も伝わらないまま閉じられてしまいます。文字が入っていれば、音が出せない場所でも内容を追ってもらえます。
内容が早く、正確に伝わるから
耳で聞く情報と目で読む情報が重なると、内容が頭に入りやすくなります。特に、商品名や数字、専門用語は、音声だけだと聞き取りにくく、聞き間違いも起こりがちです。たとえば「年間120件」という数字を声だけで伝えるより、画面に文字で出したほうが確実に伝わります。説明する内容が多い研修動画や商品説明の動画ほど、文字の効果は大きくなります。
耳が聞こえにくい人にも、情報を届けられるから
テロップや字幕は、耳が聞こえない人や聞こえにくい人にとって、動画の内容を知るための大切な手段です。2024年4月1日に施行された改正障害者差別解消法では、それまで努力義務だった事業者による「合理的配慮の提供」が義務になりました。動画に字幕を付けることは、こうした流れの中で、企業が情報を届ける姿勢を示すことにもつながります。
テレビCMでも字幕の普及が進んでいます。字幕付きCM普及推進協議会(日本アドバタイザーズ協会・日本民間放送連盟・日本広告業協会で構成)の調査によると、2025年10月1日〜8日に在京キー局5局で放送されたCMのうち、字幕付きCMの放送割合は21.6%、ゴールデン帯(19時〜22時)では31.0%でした。
何を、どこまで文字にする?テロップの入れ方の基本
文字を入れると決めたら、次に考えるのは「どこまで文字にするか」です。ここを決めずに作業を始めると、場面ごとに文字の量がばらばらになり、見づらい動画になってしまいます。
全文テロップ・要約テロップ・ポイントテロップの3つ
テロップの入れ方は、大きく3つに分けられます。
- 全文テロップ:話している内容をほぼすべて文字にする。音なしでも内容が分かる
- 要約テロップ:話の内容を短くまとめて表示する。画面がすっきりする
- ポイントテロップ:大事な言葉や数字だけを大きく表示する。印象に残りやすい
どれが正解というものではなく、動画の目的と見られ方によって使い分けます。1本の動画の中で、全文テロップを基本にしながら、特に伝えたい部分だけポイントテロップで強調する、といった組み合わせもよく使われます。
目的と見られる場所で、入れ方を選ぶ
SNSの縦型動画のように、音なしで流し見されることが多い動画は、全文テロップが向いています。インタビュー中心の採用動画も、話し手の言葉を追ってもらうために全文テロップにすることが多くなります。
一方、映像の美しさで印象を残したいブランド動画や会社紹介動画では、文字が多いと映像の良さが損なわれます。この場合は、要約やポイントのテロップに絞り、必要に応じて別に字幕データを用意するのがおすすめです。
話し言葉は、そのまま書き起こさずに整える
インタビューを全文テロップにするときに気をつけたいのが、話し言葉をそのまま文字にしないことです。「えー」「あのー」といった言葉や、言い直し、同じ内容の繰り返しまで文字にすると、読みにくいうえに、話している人が頼りなく見えてしまいます。
意味を変えない範囲で言葉を整え、読みやすい文にするのがテロップの基本です。ただし、整えすぎて本人の言葉づかいや人柄が消えてしまわないよう、バランスが大切です。社員インタビューであれば、整えた文を本人に確認してもらうと安心です。
名前・数字・専門用語は、必ず確認する
テロップの誤字は、会社の信頼に直結します。特に、出演者の名前や肩書き、商品名、数字、専門用語は、音声から聞き取ったまま入れると間違いが起こりやすい部分です。漢字の表記や、役職名の正式な書き方は、必ず社内の資料や本人に確認しましょう。公開後に誤字が見つかると、動画を書き出し直してアップロードし直す手間がかかります。
最後まで読まれるテロップのデザインのコツ

同じ文章でも、文字の大きさや色、表示する時間によって、読みやすさは大きく変わります。ここでは、読まれるテロップにするためのデザインのコツを紹介します。
1行の文字数と表示時間を決めておく
テロップは、見る人が読み切れる量と時間で出すことが大切です。参考になるのが、映像配信サービスの字幕ルールです。Netflixが制作会社向けに公開している日本語字幕のガイドラインでは、翻訳字幕は横書きで1行13文字まで、2行まで、表示速度は1秒あたり4文字までとされています。
企業動画のテロップは、話している内容をそのまま文字にすることが多いため、ここまで短くできない場合もあります。それでも、「1画面に出す文字は2行まで」「長い文は区切って複数の画面に分ける」「読み終わる前に次の文字に切り替えない」といったルールを決めておくだけで、読みやすさは大きく変わります。
フォントは読みやすさを優先し、ライセンスも確認する
テロップのフォントは、デザイン性よりも読みやすさを優先します。本文のように長く読ませる文字には、線の太さが均一で、小さな画面でもつぶれにくいゴシック体が向いています。明朝体や手書き風のフォントは、雰囲気は出ますが、細い線が見えにくくなりやすいため、タイトルなど短い文字に絞って使うのがおすすめです。
また、フォントにはそれぞれ利用条件があります。パソコンに入っているフォントや無料で配布されているフォントでも、動画への使用や商用利用が認められていない場合があります。企業の動画で使うときは、利用条件を確認してから使いましょう。
色・縁取り・背景で、どんな映像の上でも読めるようにする
白い文字は暗い映像の上ではよく見えますが、明るい空や白い壁の上では読めなくなります。どんな背景の上でも読めるように、文字に縁取りや影を付けたり、文字の後ろに半透明の帯(座布団と呼ばれます)を敷いたりするのが基本です。
文字の色は、会社のブランドカラーを取り入れると統一感が出ます。ただし、色を使いすぎると、どこが大事な情報なのか分からなくなります。基本の文字色は1色にして、強調したいところだけ色を変える、といったルールにしておくと、まとまりのある画面になります。
表示する位置は、隠れない場所を選ぶ
テロップは画面の下側に入れるのが一般的ですが、端に寄せすぎると、再生する環境によっては文字が切れたり隠れたりすることがあります。特に、SNSの縦型動画では、画面の下や右側にアプリのボタンや投稿文が重なるため、大事な文字は画面の中央寄りに配置しましょう。
また、YouTubeなどで字幕データを表示すると、字幕は画面の下に出ます。焼き付けたテロップと字幕が同じ位置に重なると、どちらも読めなくなるため、字幕を付ける前提の動画では、テロップの位置にも気を配る必要があります。
デザインのルールを1本の中で統一する
テロップのデザインは、動画全体で統一することが大切です。場面によって文字の大きさや色、位置が変わると、見る人は毎回「どこを読めばいいか」を探すことになり、内容に集中できません。名前と肩書き、話の書き起こし、ポイントの強調など、種類ごとにデザインを決めて、最後まで同じルールで入れていきましょう。複数の動画をシリーズで作る場合は、ルールを書き出して共有しておくと、どの動画もそろった印象になります。
媒体別:テロップ・字幕の考え方

動画をどこで見せるかによって、最適な文字の入れ方は変わります。主な媒体ごとの考え方を見ていきましょう。
Webサイト・会社紹介動画
Webサイトのトップページなどで自動再生される動画は、多くの場合、音が出ない状態で再生されます。音なしでも何の会社か伝わるように、事業の内容や会社の考え方を短いテロップで添えておくのがおすすめです。映像の印象を大切にしたい場合は、文字の量を絞り、余白のあるデザインにします。
YouTube:テロップと字幕データを組み合わせる
YouTubeでは、映像に焼き付けたテロップに加えて、字幕データを登録できます。YouTubeには日本語にも対応した自動字幕の機能がありますが、YouTubeのヘルプでは、発音や方言、雑音などが原因で、話している内容が正しく表示されないことがあると説明されています。そのうえで、自動字幕の内容を必ず確認し、正しく書き起こされていない部分を編集するよう案内しています。
自動字幕をそのまま公開するのではなく、確認して直した字幕を登録することで、内容を正確に届けることができます。
SNSの縦型動画
InstagramのリールやTikTok、YouTubeショートなどの縦型動画は、タイムラインで音なしのまま流し見されることが前提です。冒頭の数秒で「何の動画か」が分かるテロップを大きめに入れ、話している内容も全文テロップで追えるようにしておきましょう。スマートフォンの小さな画面で見るため、横長の動画よりも文字を大きく、1行の文字数を少なめにするのがポイントです。
展示会・研修・社内向けの動画
展示会のブースで流す動画は、周りの音がうるさく、声がほとんど聞こえない環境で見られます。ナレーションに頼らず、テロップと映像だけで内容が伝わる作りにしておくと安心です。
研修やマニュアルの動画では、手順や注意点を文字で残しておくと、見返したときに必要な場所を探しやすくなります。社内の大事なお知らせを伝える動画も、文字があれば、聞き逃しや聞き間違いを防げます。
テロップは自社で入れる?プロに頼む?

最近は、スマートフォンのアプリやAIの文字起こし機能を使えば、誰でも手軽にテロップを入れられるようになりました。自社で入れる場合とプロに頼む場合、それぞれの考え方を整理しておきましょう。
自動の文字起こしで、作業の手間は大きく減った
音声を自動で文字にする機能を使えば、全文テロップの下書きを短い時間で作れます。社内向けの短い動画や、スピードを優先したい動画であれば、こうした機能を使って自社で入れるのもひとつの方法です。
自動の文字起こしに任せきりにしない
ただし、自動の文字起こしは、そのまま使えるものではありません。前述のとおり、YouTubeのヘルプでも、自動字幕は話している内容を正しく表示できないことがあるとして、確認と修正を求めています。名前や専門用語の変換ミス、文の区切りのずれ、話し言葉のままの読みにくい文などは、人の目で一つずつ直す必要があります。社外に公開する動画では、この確認と修正にこそ時間をかけるべきです。
プロに頼むと、読みやすさと印象が変わる
動画制作会社に頼む場合は、文字を入れる作業だけでなく、「どの言葉を、どのタイミングで、どの大きさで見せるか」までを設計します。話し言葉を読みやすい文に整え、映像の切り替わりに合わせて文字を出し入れし、会社のブランドに合ったデザインで統一することで、同じ内容でも伝わり方が大きく変わります。採用動画や会社紹介動画のように、会社の顔として長く使う動画は、プロに任せる価値が大きい部分です。
依頼するときに伝えておきたいこと
テロップを含めて制作を依頼するときは、次のような情報を最初に伝えておくと、仕上がりのイメージがずれにくくなります。
- 動画を主に見せる場所(Webサイト、YouTube、SNS、展示会など)
- 全文テロップにするか、要点だけにするか
- 字幕データ(YouTube用の字幕ファイルなど)が必要か
- 会社のブランドカラーや、指定のフォントがあるか
- 出演者の名前・肩書き、商品名などの正式な表記
特に正式な表記は、制作会社では判断できない情報です。一覧にして渡しておくと、確認の手間も誤字も減らせます。
動画のテロップ・字幕についてよくある質問
Q. テロップは、すべての動画に入れたほうがよいですか?
多くの企業動画では、何らかの文字を入れておくことをおすすめします。音を出さずに見る人や、聞こえにくい人にも内容を届けられるからです。ただし、映像の雰囲気を大切にしたいブランド動画などでは、文字を最小限にして、別に字幕データを用意する方法もあります。動画の目的に合わせて、入れる量を決めましょう。
Q. 全文テロップと要点だけのテロップ、どちらがよいですか?
SNSで流れる動画や、インタビュー中心の動画は、全文テロップのほうが内容を追ってもらいやすくなります。映像で印象を残したい動画や、Webサイトでじっくり見てもらう動画は、要点だけのテロップのほうがすっきりと見せられます。迷った場合は、どこで、どんな状態で見られるかを基準に考えてください。
Q. YouTubeの自動字幕があれば、テロップは入れなくてもよいですか?
自動字幕だけに頼るのはおすすめしません。自動字幕は、見る人が字幕ボタンを押さないと表示されず、内容が正しく書き起こされないこともあります。大事な情報はテロップで確実に見せ、字幕データは確認して直したものを登録するのが安心です。
Q. 完成した動画に、あとからテロップを足すことはできますか?
編集のデータが残っていれば、あとからテロップを足したり直したりできます。編集データが無く、完成した動画ファイルしか手元にない場合でも、上から文字を重ねることはできますが、元のテロップを消すことはできません。将来の修正に備えて、制作を依頼するときは、編集データの扱いについても確認しておくと安心です。
Q. 英語など、ほかの言語の字幕も付けられますか?
付けることができます。日本語の字幕データを作っておけば、それをもとに翻訳した字幕を用意できます。ただし、言語によって文の長さが変わるため、日本語と同じタイミングでは読み切れないこともあります。海外向けに使う予定がある場合は、企画の段階から相談しておくとスムーズです。
まとめ:テロップは「読まれる設計」で動画の伝わり方を変える
テロップや字幕は、音を出さずに見る人にも、聞こえにくい人にも、動画の内容を届けるための大切な要素です。まずは、映像に焼き付けるテロップと、表示を切り替えられる字幕の違いを押さえ、動画の目的と見られる場所に合わせて、全文・要約・ポイントのどの入れ方にするかを決めましょう。
そのうえで、1画面の文字量と表示時間、読みやすいフォント、背景に負けない色と縁取り、隠れない位置、デザインの統一といったコツを押さえれば、最後まで読まれるテロップになります。自動の文字起こしは便利ですが、名前や数字、専門用語は必ず人の目で確認することが大切です。
アクエリアス・ムービーでは、会社紹介動画や採用動画、研修動画、SNS用の縦型動画など、企業のさまざまな動画を企画から撮影、編集まで一貫して制作しています。テロップのデザインや、YouTube用の字幕データの作成も含めて、見る場所に合わせた文字の入れ方をご提案しています。
こんな方は、まず一度ご相談ください
これから作る動画に、どこまでテロップを入れればよいか迷っている方や、今ある動画を見直して、音なしでも伝わる動画にしたい方、Webサイト用とSNS用など、媒体ごとに文字の入れ方を変えた動画をまとめて作りたい方は、ぜひ一度お声がけください。動画の目的と見せる場所をうかがったうえで、構成とテロップの入れ方、費用の目安までご提案します。詳しくはアクエリアス・ムービーをご覧ください。
逆に、まだ相談しなくても大丈夫な方
社内向けの短いお知らせ動画など、スピードを優先したい動画であれば、まずは自動の文字起こし機能を使って、自社でテロップを入れてみるのもよいでしょう。その際は、名前や数字に誤りがないかだけは必ず確認してください。そのうえで、社外に向けて長く使う動画を作りたくなったときに、改めてお声がけいただければ幸いです。

