
「社内報を毎号作っているのに、ほとんど読まれていない気がする」「経営者の考えや会社の方針が、現場の社員まで届いていない」。社内広報や人事、総務の担当者から、こうした悩みをよく聞きます。拠点が増えたり、在宅勤務と出社が混ざったりすると、社員どうしが顔を合わせる機会が減り、会社の考え方を共有するのはさらに難しくなります。
そこで選択肢になるのが、社内報の一部、または全部を動画にする方法です。文字と写真だけでは伝わりにくい人の表情や声、職場の空気を、そのまま社員に届けられます。
本記事では、社内報を動画にするときの考え方と、インナーブランディング(会社の理念や価値観を社員に浸透させる取り組み)に効く企画のアイデア、企画から配信までの流れ、無理なく続けるための運用のコツを解説します。これから動画社内報を始めたい方も、始めてみたものの続かなかった方も、進め方の確認に使ってください。
社内報を動画にする「動画社内報」とは

動画社内報とは、社内報で伝えてきた会社のニュースや社員の紹介、経営者のメッセージなどを、動画の形で社員に届ける取り組みです。紙やWebの社内報をすべて置き換える必要はなく、記事の一部を動画にしたり、動画とWeb記事を組み合わせたりする形でも始められます。
紙・Web社内報との違い
紙やWebの社内報は、読む人が自分のペースで情報を拾えるのが強みです。数字や制度の説明、手続きの案内など、正確に読んでもらいたい情報に向いています。一方で、読むには一定の時間と集中が必要なため、忙しい社員ほど後回しにしがちです。
動画は、話している人の表情や声の調子、職場の雰囲気まで、そのまま伝えられるのが強みです。文字にすると堅くなってしまう経営者の思いや、現場で働く人の熱量は、動画のほうが伝わりやすくなります。ただし、細かい数字や長い説明を何度も見返すのには向きません。動画とWeb記事のどちらが合うかは、伝えたい内容によって決めるのが基本です。
社内広報での動画活用の現状
動画を社内広報に使う会社は、少しずつ増えています。Jストリームの「社内広報の動画活用に関する調査」(2024年)によると、社内広報の実施方法は「メール」が41.9%、「社内報などの印刷物」が35.7%と多い一方で、「社内ポータルサイトでの動画掲載」も21.2%にのぼりました。同じ調査では、社内ポータルサイトや社内サーバーでの動画掲載が、2018年の調査と比べて1割程度増えたことも報告されています。
まだメールや紙が中心ではあるものの、社内に向けた発信の手段として動画を取り入れる会社が広がっていることが分かります。
動画社内報の主な形式
動画社内報には、いくつかの形があります。代表的なのは、テーマごとに1本ずつ完成させて社内ポータルなどに置いておく「配信型」と、決まった日時に全社員に向けて流す「ライブ配信型」です。配信型は社員が好きな時間に見られ、ライブ配信型はその場で質問を受け付けるなど、双方向のやりとりができます。
また、動画だけで完結させるのではなく、Web社内報の記事の中に短い動画を埋め込む形もあります。記事で詳しい背景を説明し、動画で本人の言葉や現場の様子を見せると、それぞれの良さを生かせます。最初は今の社内報に動画を1本添えるところから始めると、負担が少なく済みます。
動画社内報が向いている会社
動画社内報が特に役立つのは、次のような会社です。
- 拠点や店舗、工場が複数あり、社員どうしが顔を合わせる機会が少ない
- 在宅勤務や時差出勤が多く、朝礼や全体会議に全員がそろわない
- 現場で働く社員が多く、パソコンの前で長い文章を読む時間がとりにくい
- 新しい理念やビジョンを掲げ、社員に浸透させたい時期にある
- 合併や組織再編のあとで、別々の文化を持つ社員を一つにまとめたい
こうした会社では、文字だけの社内報では伝えきれないものを、動画が補ってくれます。
動画社内報がインナーブランディングに効く理由

インナーブランディングの目的は、社員一人ひとりが会社の理念や価値観を理解し、日々の仕事の中で行動に移せるようにすることです。動画は、この「理解」と「行動」の両方に働きかけやすい手段です。
経営者の思いが、表情と声で伝わる
同じ言葉でも、文章で読むのと、本人が語るのを見るのとでは、受け取る印象が大きく変わります。経営者がどんな表情で、どんな言葉を選んで話すのかを見ることで、社員はその考えに込められた本気度を感じ取れます。理念や方針を文章で何度も伝えてきたのに浸透しないという会社ほど、一度、経営者自身の言葉で語る動画を試す価値があります。
ほかの部署や拠点の仕事が見える
会社が大きくなるほど、自分の部署以外の仕事は見えにくくなります。営業は工場の苦労を知らず、本社は店舗の忙しさを知らない、ということが起きがちです。職場の様子を動画で紹介すると、ほかの部署の人がどんな環境で、どんな工夫をしながら働いているのかが一目で分かります。お互いの仕事への理解が深まると、部署をまたいだ協力もしやすくなります。
理念を「行動」の形で見せられる
理念やバリューは、言葉だけでは抽象的になりがちです。「お客様第一」と掲げても、実際に何をすればよいのかは人によって受け取り方が違います。理念に沿った行動をしている社員の実際のエピソードを動画で紹介すると、「この会社でいう『お客様第一』とは、こういうことか」と具体的に理解できます。社員が自分の仕事に置き換えて考えるきっかけにもなります。
読む時間がない社員にも届きやすい
長い文章を読む時間がない社員でも、数分の動画なら移動中や休憩時間に見られます。字幕を入れておけば、音を出せない場所でも内容が分かります。社内報を「読む」から「見る」に変えるだけで、これまで届いていなかった社員に情報が届くことがあります。
インナーブランディングに効く動画社内報の企画アイデア

動画社内報は、企画次第で見られ方が大きく変わります。ここでは、インナーブランディングにつながりやすい企画を紹介します。
トップメッセージ
年始や期初、新しい方針を発表するタイミングで、経営者が自分の言葉で語る動画です。原稿を読み上げるだけでなく、なぜその方針にしたのか、社員に何を期待しているのかを、本人の言葉で話してもらうのがポイントです。インタビュー形式にして、聞き手の質問に答える形にすると、自然な表情と言葉を引き出しやすくなります。
部署紹介・職場訪問・新しい仲間の紹介
ある部署や拠点を訪ね、そこで働く人の仕事や職場の雰囲気を紹介する企画です。毎回別の部署を取り上げれば、連載として続けやすく、社員が「次はうちの部署かもしれない」と楽しみにしてくれることもあります。仕事の内容だけでなく、その部署ならではのこだわりや、ほかの部署に知ってほしいことを話してもらうと、相互理解につながります。
この企画の一つとして、新しく入った社員を紹介する回を設けるのもおすすめです。顔と名前、人柄が分かる動画があると、ほかの社員が声をかけやすくなり、新しい社員が早く職場になじむ助けになります。入社の理由や意気込みを話してもらうと、既存の社員が自社の魅力を見直すきっかけにもなります。
理念を体現した社員のエピソード
お客様からの感謝の声につながった対応や、困難な状況を乗り越えたプロジェクトなど、理念に沿った行動をした社員のエピソードを紹介する企画です。本人へのインタビューに加えて、上司や同僚、可能であればお客様の声も入れると、エピソードに厚みが出ます。社内表彰と組み合わせて、受賞者を紹介する動画にするのもよい方法です。
社内イベント・表彰式のダイジェスト
全社総会や表彰式、周年行事などの社内イベントを、短いダイジェスト動画にまとめる企画です。当日参加できなかった社員や、離れた拠点の社員にも、会場の熱気を共有できます。イベントの記録として残しておけば、翌年以降の社内報や採用活動にも使えます。
社員座談会
同じテーマについて、立場や部署の違う社員数人に話してもらう企画です。たとえば「入社して印象に残った仕事」「うちの会社らしさとは何か」といったテーマで話してもらうと、理念が現場でどう受け止められているのかが見えてきます。一人で話すインタビューより緊張しにくく、出演のハードルが下がるのも利点です。
動画社内報の作り方:企画から配信までの流れ

動画社内報は、思いつきで1本作るよりも、全体の方針を決めてから進めたほうが長く続きます。ここでは、企画から配信までの基本的な流れを紹介します。
目的と見てほしい社員を決める
最初に、「この動画社内報で何を変えたいのか」をはっきりさせます。理念を浸透させたいのか、部署間の理解を深めたいのか、経営方針を現場まで届けたいのかによって、選ぶ企画も、出演してもらう人も変わります。あわせて、主に誰に見てほしいのか、全社員なのか、特定の拠点や職種なのかも決めておきましょう。
年間の企画と配信のペースを組む
目的が決まったら、1年分の企画をおおまかに並べます。期初のトップメッセージ、四半期ごとの部署紹介、年末の表彰式のダイジェストなど、社内の行事に合わせて組むと無理がありません。配信のペースは、最初から高い頻度にせず、確実に続けられる間隔から始めるのがおすすめです。
社内の確認の流れを決めておく
社内向けの動画であっても、誰が内容を確認し、誰が最終的に公開を決めるのかを事前に決めておきましょう。完成間近になって役員や関係部署から大きな修正が入ると、撮り直しが必要になることもあります。企画や構成の段階で確認してもらう人を決め、確認にかける期間も配信の予定に組み込んでおくと、予定どおりに配信しやすくなります。
撮影と編集を進める
撮影の前には、出演する社員に、何を聞かれるのか、どこで撮るのか、どれくらい時間がかかるのかを伝えておきます。現場の仕事の様子を撮る場合は、業務を止める時間を最小限にするため、撮りたい場面を事前に整理しておきましょう。社外の人が写り込む場所や、機密情報が見える画面などは、撮影前に確認が必要です。
社内向けの動画でも、見やすさは大切です。話している内容が音を出さなくても分かるように字幕を入れる、冒頭で「この動画で何が分かるか」を示す、話の切れ目に見出しを入れるといった工夫で、最後まで見てもらいやすくなります。長さは内容によりますが、1本を短めにまとめ、長くなる話は前編・後編に分けるのも一つの方法です。
配信して、見てもらう工夫をする
完成した動画は、社内ポータルや社内SNS、グループウェアなど、社員がふだん使っている場所に置きます。動画を置くだけでは見られないことが多いため、メールやチャットで公開を知らせる、朝礼や会議の冒頭で流す、Web社内報の記事と組み合わせるなど、見てもらうきっかけを作りましょう。
動画社内報を続けるための運用のコツ

動画社内報は、始めることよりも続けることのほうが難しいものです。ここでは、無理なく続けるためのポイントを紹介します。
社内で作るものと、プロに頼むものを分ける
すべての動画をプロに頼むと費用がかさみ、すべてを社内で作ると担当者の負担が大きくなります。新入社員の紹介や日々のお知らせのような短い動画はスマートフォンで社内で撮り、トップメッセージや理念を伝える動画、周年行事の記録のように、会社の顔になる動画はプロに頼む、というように分けると続けやすくなります。プロに頼んだ動画は、社外向けの採用活動や会社紹介に使い回せることもあります。
型を決めて、毎回の負担を減らす
部署紹介やインタビューのように連載にする企画は、冒頭のタイトル、質問の順番、字幕のデザイン、終わり方などの「型」を決めておくと、毎回の企画や編集の手間が減ります。型がそろっていると、見る側も「いつものシリーズだ」と分かり、見るハードルが下がります。
見られているかを確かめ、声を集める
社内ポータルや動画の配信システムで再生数が分かる場合は、どの企画がよく見られているかを確認しましょう。あわせて、社員アンケートや感想の投稿を通じて、どの動画が印象に残ったか、次に何を取り上げてほしいかを聞くと、次の企画のヒントになります。再生数だけで判断せず、社員の声と合わせて見ることが大切です。
社外向けの動画づくりと素材を共有する
採用動画や会社紹介動画を撮る機会があれば、その撮影の日に、社内報で使う場面もあわせて撮っておくと効率的です。たとえば、採用動画のために撮った社員インタビューの中から、社内向けに伝えたい部分を別の動画にまとめることもできます。ただし、社外向けと社内向けでは伝える相手が違うため、同じ素材でも構成や言葉の選び方は分けて考えましょう。素材を使い回すときは、出演者に公開範囲を伝えたうえで了解を得ておくことも忘れないでください。
出演者の同意と公開範囲を決めておく
社員に出演してもらうときは、動画をどこで、誰に向けて、いつまで公開するのかを、事前に伝えて同意を得ておきましょう。社内向けとして撮った動画を、あとから採用サイトなど社外向けに使う場合は、改めて本人の了解を得る必要があります。出演した社員が退職したときに動画をどう扱うかも、運用のルールとして決めておくと安心です。
動画社内報でよくある失敗と防ぎ方
動画社内報は、始めたときの勢いだけでは続きません。ここでは、よくある失敗と、その防ぎ方を紹介します。
経営者のメッセージが「原稿の読み上げ」になってしまう
トップメッセージを撮るとき、用意した原稿をそのまま読み上げてもらうと、目線が下がり、表情も硬くなりがちです。文章で配るのと変わらない印象になり、動画にした意味が薄れてしまいます。原稿は話す順番のメモ程度にとどめ、聞き手が質問を投げかけるインタビューの形にすると、本人の言葉で語ってもらいやすくなります。どうしても原稿どおりに話す必要がある場合は、プロンプター(カメラの前に原稿を映す機材)を使うと、カメラを見ながら話せます。
会社が伝えたいことだけを並べてしまう
方針の説明や業績の報告ばかりが続くと、社員にとっては「上から降りてくる連絡」になり、見る気持ちが続きません。会社が伝えたいことと、社員が知りたいことの両方を企画に入れることが大切です。ほかの部署の人の素顔や、同期の活躍、職場のちょっとした工夫など、社員が身近に感じる話題を混ぜると、自然と見てもらえるようになります。
担当者一人に負担が集中して止まってしまう
企画、出演者への依頼、撮影、編集、配信までを担当者一人で抱えると、通常の業務が忙しくなった時期に更新が止まってしまいます。部署ごとに協力してくれる人を決めておく、編集など手間のかかる作業は外部に任せるなど、一人に頼らない体制を最初から作っておきましょう。
最初に作り込みすぎて、2本目が出せない
1本目に時間と費用をかけすぎると、同じ水準を保とうとして2本目以降が出せなくなることがあります。すべての回を同じ作り込みにする必要はありません。会社の顔になる回と、気軽に見られる回でメリハリをつけ、全体として続けられる形を優先しましょう。
よくある質問
Q. 動画社内報は、紙やWebの社内報をやめて置き換えるべきですか?
A. 置き換える必要はありません。制度の説明や数字の報告など、正確に読んでもらいたい情報は紙やWebが向いています。人の思いや職場の雰囲気など、動画のほうが伝わる内容から少しずつ動画にしていき、両方を組み合わせて使うのがおすすめです。
Q. 1本の動画は、どれくらいの長さにすればよいですか?
A. 内容によって変わりますが、社内向けの動画も、忙しい時間の合間に見られる短さにまとめるのが基本です。トップメッセージのように内容が多いものは、話のテーマごとに分けて複数本にすると、最後まで見てもらいやすくなります。
Q. 社内で撮影するときに、最低限そろえたほうがよい機材はありますか?
A. スマートフォンで撮る場合でも、声をきれいに録るための外付けマイクと、画面がぶれないようにする三脚があると、見やすさが大きく変わります。窓を背にすると顔が暗くなるため、窓のほうを向いて撮るなど、明るさにも気を配りましょう。
Q. 社員が出演を嫌がる場合は、どうすればよいですか?
A. 無理に出演をお願いする必要はありません。顔を出さずに手元や職場の様子だけを撮る、声だけで出演してもらう、複数人で話す座談会の形にするなど、負担の少ない出方を提案してみましょう。先に出演した社員の動画を見てもらうと、どんな雰囲気で撮るのかが分かり、引き受けてもらいやすくなることもあります。
Q. 動画社内報の効果は、どうやって確かめればよいですか?
A. 再生数や最後まで見られた割合に加えて、社員アンケートで「会社の方針を理解できているか」「ほかの部署の仕事を知っているか」などを定期的に聞くと、変化を確かめやすくなります。インナーブランディングの効果はすぐには表れにくいため、半年や1年といった単位で見ていくことが大切です。
まとめ:動画社内報は「続けられる形」から始める
社内報を動画にすると、経営者の思いや職場の雰囲気、理念に沿った社員の行動を、文字よりも具体的に社員へ届けられます。拠点が多い会社や、社員が顔を合わせる機会が少ない会社ほど、その効果を実感しやすいはずです。最後に、ポイントを振り返っておきましょう。
- 紙やWebの社内報と役割を分け、人の思いや雰囲気を伝える内容から動画にする
- トップメッセージ、部署紹介、理念を体現したエピソードなど、インナーブランディングにつながる企画を選ぶ
- 目的と見てほしい社員を決め、年間の企画と無理のない配信のペースを組む
- 社内で作るものとプロに頼むものを分け、型を決めて負担を減らす
- 出演者の同意と公開範囲を事前に決めておく
アクエリアス・ムービーでは、トップメッセージや社員インタビュー、周年記念動画、研修動画など、社内に向けた動画も企画から撮影、編集まで一貫して制作しています。社内で作る動画とプロに頼む動画の分け方も含めて、担当者の方と一緒に考えます。
こんな方は、まず一度ご相談ください
経営者のメッセージや新しい理念を、社員の心に届く形で伝えたい方や、拠点や店舗が多く、全社で共有できる動画を作りたい方、動画社内報を始めたものの、企画や編集の負担が大きくて続けられずにいる方は、ぜひ一度お声がけください。伝えたいことや社内の状況をうかがったうえで、無理なく続けられる企画と進め方を、費用の目安とあわせてご提案します。詳しくはアクエリアス・ムービーをご覧ください。
逆に、まだ相談しなくても大丈夫な方
まずは社内の反応を見てみたいという段階であれば、新入社員の紹介や部署のちょっとした紹介を、スマートフォンで撮って社内で試してみるのもよい方法です。実際に配信してみると、どんな企画が見られるのか、社員がどんな動画を求めているのかが見えてきます。そのうえで、会社の顔になる動画をきちんと作りたくなったときに、改めてお声がけいただければ幸いです。

